創業明治10年(1877年)、アリサワ酒造は高知市の東方、 高知平野の北東部に位置する古くから商工の町として発展してきた香美市土佐山田町にあります。 町の南西部が高知平野にあたりますが、その他は山林となっており全体の70%を占めています。 藩政時代からの歴史を誇る土佐打刃物(とさうちはもの)や温暖な気候で育った園芸野菜の産地、 そして日本三大鍾乳洞の1つに数えられる龍河洞(りゅうがどう)がある場所でも知られています。
今を去ること400年ばかり前に、「お婉(えん)さん」と呼ばれた女性がいました。 その父は、土佐藩執政の野中兼山という、江戸時代初期に目覚ましい勢いで治水工事や新田開発・港湾整備を行ったひとです。 しかし、その苛烈な政策が反発を買い、1663年に失脚、幽閉の身となり、程なく失意のうちに没しました。 その後、野中兼山の遺族たちは、一族の根を絶やす…お仕置きという形で、高知県の辺境・宿毛市に幽閉されました。 そして、一家が藩府から放免されたのは、家族の男子の全員が死した四十年後のこと、残っていたのは数人の女達だけでした。 そのひとりが兼山の娘「婉」です。
漢文を始め学問に優れた教養人「お婉さん」は、宿毛での幽閉中にも土佐南学の師・谷秦山と手紙での交流を続けていました。 40才を過ぎてからの放免後には、貧しい人のために薬をつくり医療を行い、その生涯を全うしました。 この人物「お婉さん」について書かれた物語は、舞台化や映画化もされた大原富枝さんの小説「婉という女」により、あまりにも有名です。 アリサワ酒造二代目宗策は、この「お婉さん」を称え「文佳人」という酒の銘柄としました。 「文佳人」つまり、「文の佳人」、手紙・文・詩歌・広くは学問に秀で、教養にあふれた美人である、と記念したのです。
日本酒は通常、出荷前に活性炭素ろ過作業を行います。これは香味のバランス調整、流通時の品質劣化への予防等の効果がありますが、 その反面、日本酒本来の 香味を削ってしまう一面があります。 また日本酒は通常、出荷までに2回の加熱処理を行います。1度目は、酒中の酵素活性を止め、生ひね香の生成、甘垂れの発生を防止するため。 2度目は瓶詰め時の火落菌による腐敗防止の為。しかし加熱処理を重ねることにより、酒の熟成がすすみ、鮮度が失われる一面があります。 文佳人は冷蔵での管理が可能な専門店のみの取扱いとすることで、しぼりたての酒がもつ豊かな味わいと、 「みずみずしい香りをできるだけそのまま味わっ いただきたい」との想いから無ろ過にしています。 そして鮮度の高い酒を年間を通じて味わっていただけるよう、一度のみの加熱処理(瓶燗)後、-5℃の冷蔵庫にて貯蔵しています。
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