久保本家酒造のある大宇陀は『万葉集』の歌人にも愛された風光明媚なところとしても知られております。 ここは飛鳥の都からも近く、『古事記』や『日本書紀』の神話にも登場する日本発祥の地であります。 また中世には織田信長の子孫が所領する城下町でもありました。 その後近世の頃にも熊野古道や伊勢街道につながる宿場町として人や物が行き交いとても賑わっておりました。 このころ初代久保勘兵衛が吉野の奥山より出でて、江戸元禄時代に現在の場所で酒造りを始めました。 大宇陀という当時の先進の地で一旗揚げてやろうという志があったのだと思います。それ以来久保家は300年余り酒造を続けてきました。
酒造りは掃除から始まります。
酒造り中、蔵の中の掃除が行き届いていないのはいただけません。
人の口に入るものを造っているのだから、まして自分たちが一番飲むのだから。
手を抜かずに掃除をやってほしいと言うと、蔵人たちは言われたこと以上のことをやってくれます。
指示された以上のことができなければ、まっとうな生もと純米酒はできないと考えて酒造りを行っています。
酒造りをする前は、生もと純米酒を造ることがゴールでしたが、プロの造り手となった今は出発点。
生もと造りは、日本酒造りの基本であると考えます。
香り系の速醸もとの造りとは違う、米洗い・蒸し・麹・酒母(しゅぼ)・醪(もろみ)それぞれの操作、作業があり、ある意味完成されています。
生もと造りの作業の一つ一つの道理を理解してこそ、新しい技術である速醸を、難なく行うことができるものと考えています。
-久保本家酒造杜氏 加藤 克則-
「生もとのどぶ」は、白身のお刺身には合わせにくいですが、赤身の魚や肉、野菜の煮物やおひたし、乾物まで普段の料理によく合うと思います。
あまり自己主張しないお酒です。割水燗にして、食中酒として飲むのが一番落ち着く飲み方です。
麹の出来が不十分で、イラ湧きしたような薄っ辛い酒は、本来の辛口ではないと思います。
麹を栗香を超えるまで造りこみ、その強い酵素力により糖化された糖を、余すところなく発酵させること。
雑味が全く感じられなくなるまで発酵した醪こそが、ちゃんとした辛口だと自分は考えます。
-久保本家酒造杜氏 加藤 克則-
2013.07.久保本家酒造蔵訪問
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