1918年に単身スコットランドへ渡り、不屈の精神でウイスキーづくりを学んだニッカウヰスキー創業者・竹鶴政孝。北海道・余市蒸溜所につづき、彼がひらいたニッカウヰスキー第二の蒸溜所がここ、宮城峡蒸溜所です。 「自然を大切にしなければおいしいウイスキーはつくれない」という竹鶴の信念に基づき、1969年に開設された宮城峡蒸溜所。樹木の伐採は最低限に留め、電線はすべて地下に埋設しました。製造工程ごとに分けられた建物の高さがそれぞれ異なるのも、自然への配慮。敷地を平らにならして全工程を同じ建物に入れるのが効率上は合理的ですが、本来の土地の起伏を活かしたのです。 受付を入口から600mも入った場所に置いたのは、訪れる人たちに鎌倉山をバックにしたレンガ造りの建造物を見てもらうための演出。昭和の高度成長期にできた工場としては極めて先進的な、自然との共生と調和を目指す思想にあふれています。
宮城峡蒸溜所では、竹鶴政孝がこだわり抜いて導入したカフェ式連続式蒸溜機「カフェスチル」が今も稼働し、香味豊かなグレーン原酒・カフェグレーンをつくり続けています。
カフェスチルは導入した1960年代初頭当時でも既に旧式とされていた蒸溜機で、雑味となる成分が残りやすいのですが、技術によってそれを原料本来の香りや甘みに変えることができるため、竹鶴はあえてこの旧式蒸溜機を選びました。
香りや味わいが淡白な通常のグレーンウイスキーと異なり、カフェグレーンは穀物の甘い香りやクリーミーなコク、ほのかな甘さが特徴。ニッカウヰスキーのブレンデッドウイスキーに豊かな香りやコクを加える役割を果たすだけでなく、単独で商品化されました。日本に先駆けて発売された海外にもファンが多く、数々の国際的な賞を受賞しています。
さらに、カフェスチルを使った新たな試みとして、大麦麦芽を原料とした「カフェモルト」が誕生。モルトの甘さと芳しさが際立つ新しいグレーンウイスキーとして、世界で絶賛されました。「カフェジン」「カフェウオッカ」も、カフェスチルによる革新的なホワイトスピリッツです。
ニッカウヰスキーが誇る稀少な資産、カフェスチル。現在主流となっている連続式蒸溜機と比べると生産効率が悪く、操作にも熟練の技が要求されますが、これからもさまざまなイノベーションを生み出していくことでしょう。
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